FRBの0.75%緊急利下げで世界経済は救われるか?
2007年の世界主要株式市場を見ると、日本の日経平均はマイナス成長に米S&P指数は小幅の伸びに留まりました。中国上海総合指数や香港のH株指数は50%を越える上昇となりました。
ところが、2008年1月21日の米国休日に市場を揺るがす売りが仕掛けられました。
主要市場の2008年 年初来騰落率(出典:和光証券)
21日の世界金融市場の株価は香港H株指数など新興国株式市場が大きく下落し、世界の主要株式指数のハンセン指数と英国のFT100指数は、それぞれ5.5%下落しました。これは、米国同時多発テロの2001年9月以来、6年4カ月ぶりの急落でした。
一般には今回の急落は、米国金融当局が対策を取りにくい米国市場の休日を選んで売りが仕掛けられたと認識されています。確かにその理由もありますが、私は次のような不安も感じています。
- 米国初のサブプライム問題が中国市場にも波及か
- サブプライムからモノライン不安へ
急落の翌22日上海証券取引所は、中国銀行の国内投資家向けA株の売買を終日停止にしました。停止の理由は上海証券取引所は、重要事項が未発表であることを挙げていました。噂では、中国の4大国有商業銀行の1つである中国銀行がサブプライムローン関連投資で巨額の評価損を計上するのではないかと見られているのです。
サブプライムローン問題は米国から一部ヨーロッパの金融機関にも波及していますが、それが中国にも影響が及んできました。サブプライムローン問題はいよいよ世界経済に影を落とす大きな問題になってきました。
さらに、サブプライムローンなど各種金融商品に保証を与えているモノライン(金融保証会社)自体が信用不安を抱えていると報道され、さらに金融市場の混乱に拍車を掛けています。
これら米国初の金融不安はもはや単なる不安から、実体経済の減速を伴い世界経済の変調へと導いているようです。
さて、今後の世界経済の動向を左右するであろうポイントをあげます。
世界経済の今後を左右するポイント
- 米政府の経済政策
- 米のブッシュ大統領は総額が最大で1500億ドル規模(約16兆円)となる緊急経済対策の概要を発表しました。しかし、戻し税や企業への税制優遇が中心なので、更なる消費刺激策が必要になると思います。
- FRB市場操作
- FRBは1月22日に0.75%という大型の緊急利下げを行いました。しかし、NYダウなどの株価は不安定な動きを見せ必ずしも十分な経済支援策となったかは不明です。月末のFOMCでさらなる利下げ実施を市場が要求していると見られます。
- 原油価格
- 米国では原油価格上昇により消費者物価が上昇しています。この影響で個人消費が落ち込み世界の消費地である米国の消費マインドが下落しています。原油価格の上昇が止まらないと今後の世界経済不安はさらに深刻になると見られます。
- 住宅市場
- 今回の金融トラブルの根元は米住宅市場のバブルが問題でした。これはかつて日本のバブル時代と同じでいつか来た道のようにも見えます。米国の住宅価格はまだまだ高い水準にあります、2008年も値下がりが続くと見られ、住宅市場が回復するのは底値が見えてからになるでしょう。
- 個人消費と雇用
- 世界一の消費大国を支える米国人は、借金してでも消費に回すと言われています。しかし、さすがの米国人もこれだけ原油があがり、住宅バブルがはじけると消費に回すお金は乏しくなってきます。さらに失業者が増えると消費意欲も薄れてしまいます。今後も雇用統計などには注意が必要です。
- 世界経済
- 2007年は米国経済に陰りが見えても、中南米やアジアの新興国の発展によりグローバル企業にとっては輸出によりある程度は経済状態を良好に保つことが出来ました。2008年も新興国の経済発展は引き続き順調だと思われますが、一部の国では先進国の経済不安が波及することも考えられます。
かつて日本はバブル崩壊で10年にも及ぶ経済不況に見舞われました。米国の住宅バブルに端を発するサブプライムローン問題で米国経済は長期低迷期にはいるのか、それとも早期に回復するのかは、上にあげた6つのポイントが重要です。
米国FRBは機動的な金利政策などを取って懸命な対応を取っていますので、日本のような長期低迷には至らないと思います。しかし、2008年はリセッション気味の経済情勢が続くのではないでしょうか。
参照
政府系ファンドがドル安トレンドを変えられる?
アブダビ投資庁が米シティに出資