米シティ銀行などが巨額な損失を計上するなど、米国のみならず世界の金融機関がまだまだサブプライムローン関連の評価損を計上するのではないかと、疑心暗鬼が広がっています。リスクマネーが原油や金などの商品買いにまわり、商品価格が高騰しています。米国住宅市場の低迷、原油高は実体経済への悪影響を孕んでいます。

政府系ファンドがドル安トレンドを変えられる?

一時107円台まで急騰した米ドル円の為替相場ですが、12月に入って少し円安方向に押し戻されました。押し戻された理由は次の二つだと見ています。

  • アブダビ投資庁によるシティ銀行への投資
  • 米FRBによる追加利下げ期待

米シティ銀行などが巨額な損失を計上するなど、米国のみならず世界の金融機関がまだまだサブプライムローン関連の評価損を計上するのではないかと、疑心暗鬼が広がっています。リスクマネーが原油や金などの商品買いにまわり、商品価格が高騰しています。米国住宅市場の低迷、原油高は実体経済への悪影響を孕んでいます。
円高がこのまま収まるかどうかは予断を許しません。下記の円ドル相場推移チャートをご覧ください。今回の円高局面でつけた107円は円高方向へのレジスタンスラインギリギリでした。もし、このラインを超えて円高が進めば一気に102円台まで次のレジスタンスラインが見あたりません。

円ドル相場推移(月足)
円ドル相場推移(月足)(出典:第一生命経済研究所

11月末からNYダウが安定し米ドル安が少し戻しているのは、アブダビ投資庁によるシティ銀行への75億ドルに上る巨額投資を決めたからです。アブダビ投資庁とは、アラブ首長国連邦の最大国が運用している政府系ファンドです。巨額なオイルマネーを運用しています。
政府系ファンドはアブダビ投資庁だけでなく、中東やノルウェー、ロシアなど資源国や、貿易黒字国が積みあがった外貨準備の一部を使ってファンド化して運用しているものです。歴史は長く古いものでは1950年代から運用している政府系ファンドもあります。

政府系ファンド 投資案件

アブダビ投資庁
米シティ銀行へ出資(75億ドル)
運用資産総額 3220億ドル
ノルウェー政府年金基金
運用資産総額 3220億ドル
サウジアラビア通貨庁
運用資産総額 3000億ドル
シンガポール政府投資公社
運用資産総額 2150億ドル

政府系ファンドは物言わぬファンドとも言われますが、運用金額が大きいので金融市場に与える影響も無視できません。G7などでも政府系ファンドの規制案が論議されているほどです。しかし、今回のアブダビ投資庁のシティ銀行への出資など、金融市場の安定に貢献する可能性もあります。
ただし、政府系ファンドといえども利益追求のために、どんな手段を取るか分かりません。政府系ファンド自身がサブプライムローンで損失を被った可能性もあります。
どちらにしろ、今後世界マネーの動きを見るときには政府系ファンドも注意する必要がありそうです。

参照

サブプライムローン問題で日米金利差縮小へ
サブプライムローン問題による為替動向を考察